今の不動産市場がバブルではないと言われる3つの理由

ここ数年は国土交通省から公示地価が発表されるたびに、『不動産価格が上昇している』というニュースが流れます。銀座の一等地では、不動産の価格がバブル時代の最高値を超えたという報道もあり、現在は第2の不動産バブルが到来していると見る人もいます。

しかし、1990年前後と現在の不動産バブルには、似たようで異なる状況がいくつか見られます。1990年当時と現在の状況を比較しながら、現在の不動産価格の上昇がバブルと言われる状況とは異なること、急に地価が下落するおそれは少ないことなどをお伝えしたいと思います。

1.土地の値上がりが急激というわけではない

まずは以下のグラフをご覧ください。

出典:(https://tochidai.info/

このデータを見ると、1980年代後半から1990年代にかけて日本の公示地価が大幅に上昇していました。このことは、まさにバブル経済と言われていた時期と一致します。1985年と比べて1990年の公示地価の平均値は3倍近くに達し、わずかな期間であったにもかかわらず大幅な上昇を見せていたのです。

しかし、2010年以降の地価の上昇幅はどうでしょうか。確かに上昇していますが、バブル期のように急激な地価の上昇は見られません。伸びるにしても割合的には3%程度と緩やかです。

『泡のように実態のない景気で、いつしか破裂して消えてしまう』ことに喩え、世は崩壊した当時の経済を『バブル経済』と命名しました。

それに比べて現在の不動産価格の伸びは緩やかです。つまり、投機目的で急激に上昇しているのではなく、需要と供給のバランスにもとづいて価格が上昇しているものと思われます。

2.日本全国で地価の高騰が見られるわけではない

そして、抑えるべきもう1つのポイントは、バブル経済と現在の好況に最も大きな違いがいくつか生じている点です。1つは日本全国で地価の高騰が起きていないことです。バブル期は日本の人口が増加傾向にあり、東京や大阪といった大都市だけではなく、地方や郊外でも地価の上昇が見られました。

しかし、現在の日本は少子・高齢化社会に突入し、人口は減少傾向にあります。今後は地方や郊外で大幅に人口が減少する可能性が高く、人が住まなくなることに伴って地価が下落する傾向にあります。

「とにかく儲かるから、どこでもいいから土地を買ってしまえ」「転売すれば儲かる」などの投機で地価が上昇しているのではなく、人や物が集まるエリアの地価だけが上昇しています。

以上の点から、実際の需要に沿って土地の価格が上昇しているのです。

3.実際の需要に伴って地価が上昇している

実際の需要に伴う地価の上昇であることを把握するため、上昇中のエリアの傾向も確認しておきましょう。

2015年以降に土地の価格が大幅に上昇しているのは、東京23区内と大阪の都心部、名古屋などです。ピンポイントで見ていくと、その他にも例えば沖縄であったり、北海道の特定の市町村であったりと、大幅に地価が上昇しているエリアの見当がつくでしょう。

各エリアの共通点は、海外の観光客の受け皿として需要がある場所だということです。2018年の基準地価の発表において、京都は最も上昇した都道府県として報道されました。

https://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20180918000110

京都は日本の古都です。古い寺社が建ち並び、海外からの観光客の数がとても多い場所です。民泊や旅館施設などのオープンが相次いでいますが、すでに施設のキャパシティは限界に達し、海外から訪れた観光客を受け入れるだけの余裕がないと言われることもあります。

日本人以外の海外からの観光客の増加によって土地の価格が上昇していることから、今後は大幅に日本人の観光客が減らない限り、上述の傾向は続くものと思われます。

そして、海外から訪れる観光客についてですが、戦後以降はほぼ右肩上がりで増加しています。最近では中国にGDPで追い抜かれるなど、世界経済における日本の存在感はやや薄まっています。

途上国と言われてきた国の収入が大幅に増加した結果、これまでは日本への旅行など考えられなかった発展途上国から数多くの観光客が訪れるようになったのです。

国力の低下は手放しで喜べることではありませんが、日本が経済的に存在感を喪失していくいっぽうで、今後の日本は観光大国として新たに存在感を増していくことでしょう。

また、北海道や沖縄などの地域を限定する形で地価が上昇している、もしくは、人口が増えているエリアは、スキー場などの観光地としての需要がある場所です。観光地としての需要があるエリアでは、旅館施設や店舗施設の相次ぐオープンで地価が上昇しています。旺盛な土地の需要があるからこそ、供給と噛み合って地価が上昇しているのです。

バブル期の風潮としては、土地を買えば儲かるといった雰囲気に包まれていました。そして、現在ほど個人で不動産に関する情報を集めるのが容易ではなく、不動産会社と個人投資家の間に情報の格差が顕著に見られました。

しかし、今ではインターネットによって個人でも不動産に関する情報を集めやすくなりました。1990年頃と比べて不動産投資の敷居は明らかに低くなりました。以上から、現在の不動産の好況はバブル経済のそれとは一線を画し、あくまで実情に即した地価の上昇にすぎないのです。

4.今の不動産投資は売買ではなく、賃貸がメイン

不動産投資は今、転換期を迎えているとも言われています。理由の一つとして2017年から2018年に起きた個人向け融資の問題が挙げられます。

『かぼちゃの馬車』や『レオパレス』など、個人投資家向けにアパートやシェアハウスの斡旋を行っていた不動産会社で問題が発生し、多数の債権が焦げ付きました。その結果、金融機関が個人投資家への融資を渋る風潮が生まれています。

したがって現在かつ今後の不動産投資は、投機などによって売買益を得るのではなく、賃料による収入で資産を形成することになると思われます。

賃貸物件の運営は家賃が収入源になるため、景気の変動の影響を受けにくいです。例えばリーマンショック時に大幅に株価が低迷し、為替相場も下落しましたが、その時は東京で賃料の相場が大幅に下落した報道はありませんでした。

人にとって家は必ず必要であり、家賃は実情に即した価格で決まります。家賃収入を目的に不動産に投資しているのであれば、資産価値の下落よりも空室の発生が最も大きなリスクになります。

もちろん、高い家賃の都心のエリアから撤退する投資家は現れるかもしれません。しかし、景気が悪くないのであれば、2割や3割もの住人が一度に引越すことはありません。むしろ家賃の高い中央区や千代田区の人口はずっと増えています。

家賃を目当てに不動産物件を所有していれば、不動産の相場の影響を受けにくくなります。安定した不動産投資を続けることができます。

不動産投資の目的が変わってきたことを受け、個人投資家の不動産の運営は比較的に安定するようになりました。

価格が下がっても家賃収入で収入が十分に得られるのであれば、慌てて物件を手放す必要はありません。じっくりと賃貸物件の運営を続けながら土地の価格の上昇を待てば良いのです。

5.今後はさらに上昇する場所と下落する場所の二極化が進む

今後の日本は土地が上昇する場所、下落する場所の二極化がさらに進むと見られています。また、土地の価格が下落する場所では賃貸物件の運営も難しくなり、反対に人や物、金は都心部の各エリアに集積するでしょう。

土地バブルの崩壊をおそれる必要はありませんが、購入する物件の立地の見極めこそが不動産投資の成否を左右するポイントになります。

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