神戸市がタワーマンションの建築を規制その狙いは?

神戸市は2019年6月、タワーマンションの建築を規制する条例を市議会に提出することを発表しました。またタワーマンションの管理組合における認証制度を、2020年から導入するとの発表を行っています。

このような事態は全国でも非常に稀なものであり、神戸市のこの取り組みが注目を集めています。ではなぜ神戸市はこのようなタワーマンション建設に規制を加えようとしているのか。その狙いを探ってみましょう。

1.神戸市では都心部でのタワーマンション建設を事実上禁止

神戸市では駅近くの都心部でのタワーマンションの建設を、事実上禁止するための条例を提出しようとしています。この条例の主導として動いているのは久元神戸市長です。

市長自身が神戸市のブランド力を維持するために、タワーマンションの建設ではなく、駅前には商業施設やビジネスビルを集積するべきだとしているのです。

上記の図が新聞誌上で発表された、タワーマンションの建設を規制するエリアになっています。原則禁止となっているのはJRの三宮駅周辺、そして山陽新幹線の新神戸駅や元町駅といった神戸市内の中心的な駅です。またその付近でも、土地に対する容積率は、最大400%に制限したした建物しか建てられないとしています。

 

神戸市には、市中心部の中央区に、市内全域分の3分の1に当たるタワーマンションがあります。その規模は2005年以降のものだけでも、18棟(計4,487戸分)となっています。

神戸市ではタワーマンションの加熱に規制を加え、三宮周辺の再開発では、商業ビルやオフィスビルなどの拡充を図る方針なのです。タワーマンションはその機能拡充の障害になると見られています。

新神戸駅から神戸駅に渡る約292ヘクタールの土地は、「都心機能活性化地区」に指定して容積率は400%以下に制限します。

その背景には、市長は神戸という街が大阪のベッドタウンになるべきではないという考えがあるとしています。神戸市の人口は現在減少傾向にあり、特に駅から離れた郊外部では顕著な傾向が見られます。神戸市の人口は、神奈川県川崎市に抜かれ、全国で第7位に転落しました。

ただ全てのエリアで減少しているわけではなく、先に挙げた新幹線の通過駅付近、そして中心部では人口がどんどん増加しており小学校不足・住宅不足などの声が上がっています。

つまり都心と郊外の差が顕著となっており、交通の便の良い駅近くに建つタワーマンションに住む人は増えています。しかしその人達は、神戸市ではなく大阪市に通勤して仕事をしているのです。

そのような状況を憂いた市長は、駅近くの便利な場所にはマンションをあまり建てるべきではない。マンションがあることで、神戸市中心部の商業施設やビジネス街としての側面が薄れていると見ています。

駅近くは商業施設やオフィスビルを集積し、そして駅から少し離れた場所に住宅を集めるようにすることで、神戸市という都市のブランド化を確立しようとしているのです。

2.人口の減少だけを見るのではなく、都市としての神戸市の存在感を高める狙い

神戸市の昼間の人口は、過去に市の人口がピークであったことと大きく変わりはありません。人口が減少傾向にありながらも、その規模は維持されています。

しかし今後タワーマンションがどんどん駅前に進出していき、オフィスビルなどが減ってしまえば、昼間の人口は大阪市に流れることになります。その結果今以上に、完全な大阪市のベッドタウンになってしまうかもしれません。

中心部の人口を維持することは可能になり、市民はいるわけですから、住民税や所得税などの正確にはそういう大きな影響は出ないかもしれません。

反面、法人がどんどん神戸市から去ってしまい法人が大阪に移転することで、法人税が大きく減少する恐れがあります。その結果街の機能や美観を維持できなくなり、神戸市は観光地よりもベッドタウン化が進んでしまいます。異国情緒漂う街そして、緑と水の街神戸としてのブランド力は大きく低下することは想像に難くありません。

そのような先の姿を憂いたからこそ、今回の市長の条例の提案があったと言えます。

様の条例は横浜市の一部にでもすでに導入されており、横浜市は神奈川県内一の市、また日本で最も人口の多い市として、その存在感は大きなものがあります。

横浜市に類似した条例を盛り込むことで、神戸市は東の横浜・西の神戸のように、港があり、そして外国人が住まう街としてのブランド力を維持していきたいという考えがあるのでしょう。

一方川崎市の場合、タワーマンションの建設で人口増加させたという背景があります。しかしその反面、人口が顕著に増加している武蔵小杉駅では、駅前のタワーマンションの乱立が進み、通勤する人たちを駅が収容できなくなっているという問題が現在表面化しています。

便利な一箇所に人を集めすぎるのではなく、いろいろな場所に人口分散。商業地機能に関しては、利便性を目的とした収益を狙うと言った考えが神戸市にはあるのです。

3.タワーマンションの乱立は街の治安悪化を招く恐れがある

実際に神戸市でも、住宅需要によって現在タワーマンションの建設が相次いでいます。60mを超える高さを誇るマンションは神戸市の市街地中心に約75棟あり、中央区にはその35%が立っているとされています。

タワーマンションが日本で建てられるようになったのは1990年代末であり、2000年代前半から東京都心、神奈川、埼玉を中心に数多く建てられるようになってきました。

しかし建築から約20年が経過し、大規模修繕の問題に直面するマンションが増えています。

まず高さ100メートルを超えるような大規模なマンションで、大規模修繕を行うようなノウハウを持っている管理業者が非常に少ないのです。

そして、管理費や修繕費がどの程度になるのか、見積もりが立てにくいことが問題となっています。

場合によっては莫大な修繕費がかかってしまい、その修繕費の負担を住人だけで賄いきれなくなることも考えられます。追加修繕費の徴収を行うことで、住人が退去してしまう恐れもあるのです。そして住人が退去してしまったマンションも、残りの住人だけでは美観や機能を保つことができずどんどん老朽化が進み、まともな管理や修繕が行われない事態も想定されます。

 

そのような事態を避けるために、神戸市では適正なマンション管理を行う管理組合が管理する物件を優良マンションとして認証する制度を提案しています。この制度は「神戸タワーマンションマネジメント制度」と呼ばれ、すでに市議会に提出されています。

この制度の導入は2019年度内の実施が現実的なものとなっており、増加し続けるタワーマンションのこれからの在り方について一石を投じる結果になるかもしれません。

まとめ

日本の高齢化社会の進行、そして少子化という傾向に歯止めをかけるのは大変難しい状況になっています。

郊外の人口はどんどん減少し、人が集まる場所にさらに金も物も集まるという傾向になることは、これから20年後30年後を目標にでもほぼ明らかだと言えます。

狭い場所に多くの人の住居を確保するためには、タワーマンションの建設が不可避です。そのタワーマンションの維持のためには、戸建て住宅よりもはるかに大きなコストがかかります。

そのことを認識して住宅を購入する人もいますが、デベロッパー側に売ってしまえば終わりという考えがないわけではありません。

建物を増やすよりも、今ある建物を生かしてどのように住宅を供給し、多くの人が快適に住める環境を提供していくのが、これからの大都市の課題になっていくのではないでしょうか。

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