被災時に必見!火災保険を使った賃貸住宅のリフォームはどこまで可能?

物件の運営ノウハウ

サムネイル

2019年秋、日本列島は台風15号、台風19号、台風21号と3つの大きな台風に襲われました。

その結果、各地で大雨や強風による甚大な被害が発生しました。災害の規模は、政府により激甚災害として指定されるほどです。

台風の被害に遭えば、一般の戸建て住宅だけではなく、マンションやアパートなどの集合住宅にも被害が及びます。

不動産物件を運営する以上、基本的には火災保険に入っている人が多いでしょう。

強風や大雨の被害において、火災保険からどれほどの補償が受けられるのか、また、火災保険を使ったリフォームは可能であるのか、お伝えします。

1.火災保険の適用範囲はリノベーションのためではなく、修復

イメージ画像

まずは火災保険の補償範囲ですが、大前提として、あくまでも現状回復、つまり修復までです。そのため、災害に遭う前の状態に戻すことはできても、新しい機能を持った設備などの費用は出ません。

例えば強風によって屋根が剥がれてしまった場合、古いスレート屋根の家であれば、新しく設置できるのは同様の価格帯のスレート屋根です。より高額な瓦の屋根やガルバリウム製の屋根を設置することはできません。同等の素材や価格で屋根を整備した時の費用を火災保険によって補うことができるのです。

ただし、100万円の保険金がおりた後、自己資金で50万円を出して150万円に増額し、高機能な屋根を設置することは可能です。高級なガルバリウムの屋根を使いたいのであれば、工事費用の一部負担を検討しましょう。

ただし、保険会社によってはどのような工事を行ったのか、工事完了後の写真を求めてくることがあります。規約違反にならないように一旦は保険金が下りたところで、「自分でこれだけの費用を負担するので、こういった工事をします」などと念の為に詳細を伝えておきましょう。そうしておけば、後々のトラブルを避けることができます。

火災保険の代理店を名乗る会社の中には、「火災保険を使えば、無料でリノベーションができる」などの謳い文句を発する企業があります。そして、「我々が代理で申請します」と言ってきます。

しかし、火災保険の申請は、加入者本人が行うのが大前提です。どのように遭ったか、どれほどの費用がかかったなどの見積もりの作成を工務店に依頼しましょう。

「我社を経由すれば、虚偽の内容でもきちんと保険金がおりるようにうまくやりますよ」と言ってくる会社は、火災保険の会社との契約違反になりかねません。

そのような会社を利用することは、絶対に避けましょう。

その他の例として、例えば「窓が割れてしまったので、新しいガラスに入れ替える」などのケースは特に問題ありません。しかし、二重窓にしたり、より高機能で割れにくいガラスにしたりする場合、費用の全額を保険金で補えません。

支払われた保険金の範囲で交換を行うか、もしくは、追加に必要な費用を自己負担し、高機能のガラスを新しく入れるようにしましょう。

2.浸水の被害でも補償を受けられる

イメージ画像2

基本的には火災保険は火災だけではなく、風災保険や水害保険もセットになっています。風災保険に入っていれば、屋根や外壁、雨樋などが台風で破損してしまっても、補償が受けられます。

2018年および2019年の浸水による被害では、場所によっては大雨による浸水や洪水の被害を受けた集合住宅が存在します。そのような場合であっても、水害保険から補償が受けられます。

特に2019年の台風では、河川の氾濫による浸水の被害が非常に目立ちました。神奈川県と東京都の間を流れる多摩川でも、一部のエリアで河川の氾濫による浸水が発生したとの報道が流れました。

直接的に強風の被害がなかった福島県や長野県では、至る所で河川が氾濫して家が流されたり、死者が出たりするほどの非常事態に陥りました。

建物の立地によっては、強風以上に水害による被害には気を配る必要があるでしょう。強風対策はガラスの入れ替えや屋根の交換などにより、ある程度は対策が立てられます。

しかし、浸水対策は立地の問題が大きく絡んでくるため、自力での対策には限界があります。堤防が低い川の付近に集合住宅を購入してしまった場合、被害を避ける対策は自治体に依存するしか他に方法がありません。自力で可能な対策は、せいぜい集合住宅を売却し、より被害を受けにくい場所に買い替えることくらいです。

河川の付近に集合住宅を持つ人は、手厚い保険への見直しを考えた方が良いでしょう。

水害による被害を受けて補償を受けるには、多くの場合はいくつかの条件が設定されています。

条件としては、以下の2点です。

・損害額が家財あるいは建物の時価の30%以上のケース

・損害が床上浸水あるいは地盤面から45cmを上回る浸水によるケース

仮に床上浸水ではなくて床下浸水だった場合、保険金の支給対象にならないことがあります。水害の後にどのような状態に陥ったのか、しっかりと写真を撮影し、状況確認の資料として揃えましょう。

そして、保険金を請求する際には、市町村が発行する罹災証明書が必要です。大規模な水害の後に窓口に人が殺到することで罹災証明書の発行に時間がかかることもあります。できるだけ速やかに申請を行いましょう。

足場を設置する費用はかかりますが、外側部分の工事ですので屋根の工事自体は容易です。生活への影響も軽微です。

しかし、浸水による被害では、一旦床板を外して交換するなどの手間がかかります。住人がいては補修が不可能になることもありますので、一時的に他の場所に住み換えてもらうなどの手間がかかり、相当に大規模な工事になってしまいかねません。

今回の台風を教訓にするのであれば、今後はきちんとハザードマップを見てある程度は高台などに物件を購入するなどの水害にまつわるリスク対策を取りましょう。

先に述べた通り、保険金がおりたとしても、交換は被災前と同等の機能や性質を有する素材に限られます。高級な素材への交換を目的としたリフォームは、申請が通りにくいでしょう。

水害による被害は建物の腐食を誘発し、強度に直接影響します。できるだけ被害は避けるように事前の対策を講じましょう。

3.建物管理賠償責任特約(施設賠償責任特約)も利用したい

また、リフォームやリノベーションとは直接関係はありませんが、賃貸物件を運営する際に是非とも入っておきたい保険として建物管理賠償責任特約があります。

これは建物のメンテナンス不備、または、安全性をきちんと維持しなかったなどの理由で、建物周辺を通りがかった人に怪我を負わせてしまった場合の補償制度です。

怪我の治療費だけではなく、対物損壊も補償されます。

建物管理賠償責任特約から保険金がおりるケースとして、以下の3点が挙げられます。

・錆びている手すりから人が落ちて怪我を負わせた

・屋根の剥がれを放置していたため、屋根が落下して下を歩いていた人に怪我を負わせた

・落下物が車に傷をつけた

などです。

他人の財産に被害を与えた場合も対象になります。

基本的には管理の不備による被害が発生した場合の補償金、という位置づけです。

台風によって外壁の一部が剥がれて飛んでいき、他の家の窓ガラスを割ってしまった場合は自然災害による不可抗力の被害であるため、保険の対象外になります。

それでも、たとえ台風による不可抗力の被害だったとしても、「お前の家から飛んできたものがうちの家を壊した」ことにより生じたトラブルはどうしても起こりかねません。そのような時であっても、状況によっては保険金がおりることもあります。

まずは保険会社に状況を説明し、保険金がおりるかどうかをしっかりと確認しておきましょう。

関連記事

カテゴリー

アーカイブ