シェアハウス・サブリース問題で投資家が気をつけるべきポイントとは?

物件の運営ノウハウ

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2017年から不動産業界で問題になっていることの一つに、シェアハウス運営に伴うサブリース契約があります。

これは、多くの投資家が不動産会社からサブリースを前提にシェアハウスを建てたが、その後の家賃が支払われずに莫大な借金だけを背負ってしまった問題です。では、なぜこのような問題が起きてしまったのか、また、自分がサブリース契約を結ぶときはどのような点に注意すれば良いのか、ここではお伝えしていきます。

1.シェアハウス問題とは

裁判所

シェアハウス問題とは、すでに倒産した不動産会社のスマートデイズが投資家に斡旋していた『かぼちゃの馬車』という女性専用シェアハウスのトラブルを指します。

かぼちゃの馬車の建築に関しては、スマートデイズ社が個人投資家に謳った内容が「サブリース契約を結ぶので、確実に収入が得られる」というものでした。そこで投資家がスルガ銀行から1億円以上の融資を受けました。

しかし、シェアハウスを建てたあと、すぐに家賃は支払われなくなり、スマートデイズ社は倒産。個人投資家は資産価値の低いシェアハウスと、スルガ銀行から融資を受けた高金利のローンのみが残るという事態に陥っているのです。

1-1.サブリース契約を結んだが、契約の家賃が支払われない

まず、このサブリース契約の一番の問題点は、投資家は一定の家賃が毎月入ってくることを信じて契約を結んだにもかかわらず、スマートデイズ社からの家賃の支払いが滞ってしまったことでした。

その理由は二つあります。

まず、この女性専用シェアハウス『かぼちゃの馬車』に入居者が集まらなかったことです。かぼちゃの馬車はシェアハウスでしたが、共有スペースがない、パーソナルスペースが非常に狭い、立地が悪いなど、物件としての魅力に欠けるものでした。そのため、入居者が集まらなかったのです。

もう一つは、入居者の女性に対して就職を斡旋することで、仲介手数料を得ようと考えたことでした。手数料収入を大きな収入源の一つと見込んでいましたが、同社に就職を斡旋するノウハウがなく、事業も頓挫したため、想定していた収益が得られませんでした。

家賃収入はなかった、仲介手数料も入らなかった。

この2点の見込み違いが収益を悪化させ、投資家に対して想定通りの支払いができなかったのです。

1-2.物件購入価格と売却価格の差が大きく処分できない

この問題が深刻化してしまったのは、オーナーに支払うための収入がなかっただけではありませ。仮に家賃が支払われなくても、自らがシェアハウスを運営したり、物件を売却したりすれば、資金の大半を回収できます。しかし、かぼちゃの馬車のシェアハウスは1億円以上もの高額な土地代と建築費を投資家から集めていたにもかかわらず、実際は非常に地価が低く、駅から離れた利便性の悪い場所に安普請(※やすぶしん:あまり金をかけずに建てた、安物の家のこと)のシェアハウスを建てただけでした。

そのため、売却しようとしても購入価格の半分以下の値段しかつかず、ローンを完済できないため、オーナーは手放すことすらできないのです。オーナーとしては高額のローンを毎月返済しなければならず、窮地に追い込まれている人が多いのです。

1-3.サブリース契約を解除したくても、違約金が求められることも

また、これはかぼちゃの馬車に限った話でありませんが、他のサブリース契約でも同様のトラブルが続出しています。想定通りの家賃が支払われないため、サブリース会社に代わって自らが物件を運営したいと思って契約の解除を求めても、契約先の不動産会社が解約時に違約金を求めてくることがあります。

もし違約金が数百万円の規模に達して、現金で支払うことができないのであれば、もはや投資家は解約すらできません。ローンの返済額が毎月の家賃収入を上回っている状態、すなわち、赤字を垂れ流し続けているため、物件を手放せないジレンマが続くことがあるのです。

2.サブリース契約で失敗した投資家の誤算とは

「投資である以上、失敗は起こるもの」と、想定外のできごとにあらかじめ備えておくのが投資家のリスク管理です。投資家としては、どういう点に気をつけなくてはいけないのでしょうか。

2-1.物件が建つ立地を確認しなかった

まず、最も重要なのは、物件が建てられる場所を確認することです。不動産投資は物件の立地が成否を握っていると言っても過言ではありません。かぼちゃの馬車の空室が埋まらないのは、立地が悪いという点も大きく影響しています。

立地の良い場所、例えば駅から徒歩5分以内であれば、少なくとも空室が埋まらなくて困るという事態は避けられます。逆に10分以上も離れているような場所では、特に女性向けの物件は安全性の面で敬遠される傾向にあります。

駅から近い、良い立地の場所に物件を購入しておけば、売るのが円滑になり、しかも、高く売れます。物件の立地は必ず、チェックしておきましょう。

2-2.提示された家賃収入を周辺の相場と比較しなかった

かぼちゃの馬車はサブリース契約ながら、年利8%という非常に高い収益率が提示されていました。サブリース契約の手数料は、通常の家賃収入の20%に相当する金額です。手数料が取られる前のかぼちゃの馬車は、年間の利回りを10%に想定していました。

新築アパートで10%を取れる物件は、現在、なかなかありません。あまりにも相場よりも高い収益性が提示されているときは、本当にその家賃で人が集まるのか、周辺物件の相場と比較する必要があります。

サブリース契約を結ぶときは、物件の運営元の不動産会社が想定している家賃の金額を必ず確認します。その数値が高かった場合は、見積もりが甘いものとして契約を考え直したほうが良いです。

2-3.物件の設備を確認しなかった

物件の立地もそうですが、設備自体が充実していないと人は住んでくれるものではありません。かぼちゃの馬車においては個人の居住スペースが大変狭く、防犯性やプライバシーの確保の面で問題がありました。きちんと物件を確認して、自分が住みたくなるほどの物件で他人もまた住みたくなるのかどうか、また、断熱性や防音性が優れているのか、などを確認しましょう。

3.サブリース契約を結ぶ時にチェックするべきポイント

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仮に自分が物件の購入とサブリース契約をセットに行うとしたら、どのような点にチェックをしておけば失敗を防げるでしょうか。

3-1.物件や土地の価格が適正か

まず、チェックをするのは、建物と土地の価格が適正かどうかです。サブリース契約は、基本的に業者による新築物件の建築が前提になっています。業者としては、サブリース契約の手数料と建築費の二つの面で、利益を得ようとします。そのため、価格には業者の利益がかなり上乗せてしまっているのです。

自分で業者を手配して同じようなアパートを建てたときの費用と、指定された業者にアパートの建築を一任したときの費用を比較して、指定業者が高すぎる場合は契約しないほうが良いです。

3-2.解約が自由に行えるのか

違約金の発生が解約のネックにつながっています。事態が多く見られます。違約金はどのようなときに発生するのか、どの程度の金額になるのかについて必ず、確認しておきましょう。

3-3.家賃見直しの規定はどうなっているのか

サブリース契約では、家賃が年々低下していくのが一般的です。物件の経年劣化が進むにつれて競争力が落ちていくため、家賃が下がること自体は想定しておかなければならないリスクです。

ただし、家賃の値下がり幅がどの程度なのか、何年ごとに見直しを行うのか、などを確認しておかなければ、予想を上回る早さで家賃収入が大幅に減ってしまいます。家賃の見直しは2年ごとに行われるのか、5年おきに行われるのか、また、1回の更新で家賃の値下がり幅は最大で何パーセントまでなのかについて確認しておきましょう。

3-4.物件の需要を想定する

サブリース契約を解約したあとは、自分で不動産物件を運営して事業の立て直しを図ることもあります。そのような時に賃貸の需要が見込めないエリアでは、家賃収入を見込むことはできませんし、売却もできません。

「サブリース契約だから空室が発生しても家賃が入る。だから、物件の魅力は気にしない」

このような理由で失敗している人が多いのです。自分で物件の運営を行うときのことも考えて、きちんと需要があるエリアに物件を購入しましょう。

まとめ

かぼちゃの馬車では、投資家が不利益を被ることになるスマートデイズ社の営業手法が大きな問題に発展しました。しかし、一般のシェアハウス問題においては、投資家側の見込みが甘かったために失敗しているケースも多いです。

また、基本的なポイントとして自分で運営できるのか、家賃収入の水準が適正なのか、などの基本的な不動産の知識を身につけておけば、大きな失敗を招いてしまうことはありません。

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